日常〜何日君再来〜
作・かぐら坂目薬・カット・松本郁未

「まるごとバナナって美味ぇよなぁ!なあ?」
かーっやっぱり減量しなくていいってなるとこーいうのが好きなだけ食えて幸せだよな〜♪とこの人は言う。このクソ暑いさなかそれもシャワー浴びたあとにのたまう。ホカホカ湯気をたてながらパン一の首にタオルをおっさん巻きしたナリで、いそいそ冷蔵庫を開けて。足取りも軽やかにそれスキップじゃなくてツーステップっスよ伊達さん、とツッコミたくなるような微妙スキップをしながら。
いっぽう言われたオレはというと、
「…オレ、食ったことないスから」
なぞとドライに答えクールに微笑む。ニッとすこし苦笑気味に笑顔を向ける。最近お定まりのパターンだ。

 

 

伊達さんは本当に甘いモノが好きだ。
ジム帰り耳元で「今日いくからな」と囁かれた日は要注意だ。
帰りのコンビニは本当に危険地帯だ。
コンビニに入るとまずオレは奥の方の棚に向かう。
明日の味噌汁の具は豆腐とわかめにしよう、あとカマスの開きと…大根あったよな?こないだ近くの総菜屋で分けて貰ったぬか床あるからおろしにした余りは漬けておくか。あ、タマゴ買わないと。伊達さん卵焼き好きだからな、しかも砂糖が入ってるやつ。今時ガキでも甘い卵焼きなんて食わねえのになー、等々瞬時に思考を巡らせる。
その間、大抵伊達さんは入り口の方でマンガを立ち読みしている。
で、何が危険かというとこの人ときたらオレが味噌汁に入れる豆腐を絹ごしにするか木綿にするかで悩んでいるその隙にだ、サッとカゴに滑り込ませてしまうのだ。そう甘いモノを。(時にスポーツ新聞とかマンガとかも)
しかるのちにオレはいつもレジにて見覚えのないババロアだのプリンアラモードだのの代金を支払う事になるのだ。
別に代金を払ってほしい訳ではない。
いつの間に入れたんだ!という事ももう気にしていない。それについては分析済みである。前述の通りオレが目の前の豆腐に意識を集中させているその瞬間を狙って潜り込ませていくと思しい。現場を押さえたわけではないからあくまで推測の域を出ないが…多分そうだ。そこ以外に死角はない。
コンビニの菓子ひとつで下らない、と笑う向きもあろうがしかしこれは恐るべきテクニックだ。なんせ背後に近寄ったという気配すら感じさせずましてやカゴがさっきより重くなったか?と感じさせる事もなく滑り込ませてしまうのだから。
流石だ。
やっぱりこの人は凄い。

 

 

話を元に戻そう。
そういうわけで甘いモノ好きな伊達さんだが、目下のヒットは件の『まるごとバナナ』らしく、家にやってくる度風呂上がりにテレビのお供にと食っているのを見る。
で、オレが側に行くとナントカの一つ覚えが如く例の台詞を吐くのだ。
クリームまみれになってる髭の口元でニカっと笑って。
憎たらしい?
いや可愛い。
いや可愛さ余って憎さ百倍?
いややっぱり可愛いモンは可愛い!
だから困るんだ!
だってバナナだぞ!バナナ!ぎゅっと一握りな直径に青い時期はがっしりと力強く固く、熟れたと思えば今度はぐじゅっと掌のなかでカンタンに潰れちゃってとろんと甘ったるいにおいを放つアレだぞ。素手で食すにはぐいっと聳え勃っ…立っているかのごとき反り身の皮をむりむりと剥いてあぁんとオクチを開けなければ入りきらない…とにかく淫靡でいやらしくってあからさまで赤裸々で痴れったらしいあのくだものだぞ。それをまるごと…(第一『まるごと』ってナニゴトだよ)べたべたねっちょりした白いモノをたっぷりまぶして更に飽きたらずふんわりしっとりのめり込みスポンジにくるんだシロモノだぞ。
そんなにあのハズカシイくだものが…あの破廉恥な食い物が好きなのかアンタは!
そんなに欲しいんだったらオレが直接ぐりっとずぽっと挿れてやる!
というかむしろ自分がぐりぐりずぷっと入りたい!
じゃなくて。
そしたらバナナはアンタのあったかいところの熱でとろけて甘酸っぱいようなあおくさいようなニオイを出すし、オレは…オレは、アンタの喉がかれちゃうぐらい突いたり抉ったりこすったりして白いとろりを吐き出すよ。自分だけイクわけじゃねえ、オレはそんな狭量な男じゃあない。だからアンタのも勿論吸い上げたり先っぽくにくに弄ってあげたりして出させて…それで堪えきれなくなったアンタが声を上げて出しちゃったモノなんかもきっちり呑んでやるし…
あっ。
やべぇ。
勃ちそう。
うーん。
我慢、出来るかな?収まるかな?マズイよな?まだそういう雰囲気じゃねえしここでガッついたらなんか「若えなーオイ」なんて小馬鹿にされそうで癪だし。
よしっ。
いっちょトイレ行って抜いてくっか!
一回出しとけば後の本番で長保ちするしな!
ふふ、そうと決まれば今日のオレはひと味違いますよ伊達さん、あんあんハァハァ言わせてイヤってほどイカせてあげますからね。ダメとかムリとかそーいう泣きが入っても勘弁しませんからねハッハッハ!
アレとかコレとかソレとかとにかく妄想一杯もういっぱいいっぱいなオレにクリームつけっぱなしの伊達さんがまた笑いかけてくる。ああもう、拭いなさいよそれぐらいコドモじゃないんだから出来るでしょ。で?なに?このうえ何をオレに言おうってんですかアンタ。つーかオレトイレ行きたいんスけど?
「お?じゃ食うか?半分やるよ」
「え、いや…あ、じゃ…いただきます」
断るとなるとスネて長くなりそうだったので諦めて食うことにした。甘いモノは嫌いなのだが背に腹は代えられない。
甘ったるいニオイを放つねっちょりしたその物体──伊達さんの唾液つきということはこの際考えない。そんなこと意識したらすでに半勃ち状態のブツが暴発してしまう──を口に運ぶ。目を瞑りひといきに頬張り咀嚼する。
なんとか呑み込んでふと目をあげると伊達さんの顔が目の前にあった。
なんだ。今度はなんだ。こちとら今取り込み中だそんな近くに来たら襲うぞコラ。
「おまえ、口にクリームついてるぞ」
れろん、という可愛らしい擬音にふさわしい行為がそこでなされた。

 

 

その後オレがまだホカホカしてるパン一のおっさんに襲いかかった事は語るべくもない。
そしてあっちゅー間に昇天してしまった事も。
あんまりお粗末に達してしまったから、まだイッてない伊達さんに「オイオイしっかりしろよー若ぇなー」と笑われちまった事も。
そしてオレは、それじゃ三擦り半劇場だぞぉなんてしつこく笑ってるおっさんにぽんぽん頭を叩かれ空しくティッシュを使いつつもう絶対『まるごとバナナ』なんて買ってやらないと決めた。



目薬さん本当にありがとうでした!!!
っていうか甘党伊達が浸透してきて嬉しい限りですvv
お約束通りカットもつけましたがこんなのでいいんスかねぇ…。
しっかし、沖田の妄想っぷりが面白いッス〜!!!最高ッスよ!